硝子のハート

それは、昔。もう何年も前の話。
ある出来事をきっかけに、オレのハートは無惨にも木っ端微塵に砕け散ったのだ。

忘れもしない。いや、忘れたいのだか、忘れられない記憶。最悪の悪夢。

頭に血がのぼって行く..相手の声がだんだんかすれて、小さくなって行く..だんだん視界が狭まって行く..。

オレは意識を失ったらしい。
気がついた時には、ストレッチャーで、救急車に運ば
れていたのだ。

「らしい」と言うのは、意識を失った瞬間の記憶がないからだ。

念のため、MRI検査をすると医者がいう。
薬を入れるから、ちょっと、気持ち悪くなるかもしれませんよ..と。
オレの身体の中に液体が入って来る感覚が..走る。
ほんとに、気持ち悪い。しかも、熱い。巨大な輪っかの中に身体をスライドさせられて..。

結果は、問題ないです..と。
当たり前だ。心が砕けたのに、MRIに映る訳がない。
そして、オレのハートブレイカーとしての人生がここから、始まったのだ。

砕け散った硝子の破片を何とか、かき集め..いつ爆発するか、分からない硝子のハートという核爆弾を身体に抱えて..。